(42)SED活用法(1) 室の床高さ・天井高さ
2025/02/15
避難安全検証自動計算システムSEDの操作方法について、ユーザーのみなさまから、うまく入力できない、操作が難しい等のご質問をいただきます。操作方法はマニュアルに記載しておりますが、やや説明不足でわかりにくい部分もあるかと思います。個別での回答は困難ですので、ご質問の多い項目について、本コラムで詳細に説明いたします。加えて、SEDの便利機能を最大限に活用するためのコツや技法についても余すところなく述べていきます。今回は、室の床高さ、天井高さについての解説です。
尚、文末に、この記事に用いたSEDのバージョンNoを記載しております。SEDは日々改良を進めているため、画面イメージが最新のSEDのものとは若干異なる場合があります。機能は同じですので、ご了承のうえでご覧ください。
室オブジェクトの高さに関連する設定
室オブジェクトの高さに関連する設定は、蓄煙体積、煙発生量、排煙量、煙伝播に関わる重要な数値です。告示に示される計算方法を熟知していれば、説明がなくても理解できるのでしょうが、リファレンスマニュアルでは複数の機能がまとめて記載されており、わかりづらく感じられるようです。ここでは、下に示すオブジェクト属性パネルの赤枠の項目について、個別に解説します。
(1)設計床高さ
当該階の基準FLから室内の基準となる床までの高さ(mm)です。作図時に入力した数値が反映されます。設計床高さ=FL±0と設定する場合は、0を入力します。
これは告示には記載のない項目です。告示では全ての室の設計床高さは同じ前提で書かれていますが、実際の建物では全ての設計床高さが同じとは限りません。設計床高さは、居室検証には影響しませんが、煙伝播を計算する際のHlim(限界煙層高さ)に影響し、煙の伝播方向によって伝播先での煙降下時間の結果が異なります。
上図は、室(1)(2)共に天井高さ3,000mmの室です。設計床高さに500mmの段差があり、間仕切壁に開口部(防火性能:その他)が設置されています。この時、室(1)から室(2)への煙伝播計算を行う時のHlim(限界煙層高さ)は2,000mmに対し、室(2)から室(1)への煙伝播計算を行う時のHlim(限界煙層高さ)は2,500mmです。室(1)(2)は設計床高さが違うだけですが、室(1)から室(2)への煙伝する場合の室(2)の煙降下時間は、1.8761分、室(2)から室(1)への煙伝する場合の室(1)の煙降下時間は、1.2585分と、異なる結果となります。添付の「設計床高さに相違がある煙伝播.seda」で確認してみてください。
※設計高さが異なる室間に開口部を設置する場合の注意
開口部の設置高さは、開口部の所属室の床からの高さとなります。上記の例では、室(1)に所属する場合の設置高さは1,000mm、室(2)に所属する場合の設置高さは、1,500mmとなります。尚、開口部入力後に所属室を変更すると、設置高さはそれぞれの床高さからの数値に自動的に変換されます。
(2)入力方法
室の床高さ、天井高さの具体的な入力方法について解説します。
(a)床段差のない室
天井高さに3,000mmを入力します。
※SEDでは、告示の「平均天井高さ」を「天井高さ」と表示しています。
※Hroomは床面最高高さから平均天井高さまでの高さで、室の平均天井高さ・床面段差の値に応じて自動算定されます。任意の数値に変更することはできません。
※最高天井高さはユーザーが任意の数値を入力しない場合、天井はフラットと認識され、天井高さと同じ数値が自動的に入力されます。
(b-1)床段差がある室(最も低い位置が基準FLの場合)天井高さに3,000mm、床最高高さに500mmを入力します。
(b-2)床段差がある室(最も高い位置が基準FLの場合)(b-3)床段差がある室(段差の中間が基準FLの場合)
天井高さに2,700mm、床最高高さに200、床最低高さに-300mmを入力します。
(b-1)~(b-3)は基準FLの高さが異なり入力数値が違いますが、室の断面形状は同じです。よって、室面積、内装の種類、積載可燃物の発熱量が同じであるならどの入力方法であっても煙発生量は同じになります。
(3)平均天井高さ
室の天井高さは、煙発生量の算定や蓄煙体積の算定に利用されます。そのため、天井高さが一定でない場合は、平均天井高さを入力する必要があります。複雑な形状の天井の場合、予め別途計算した天井高さを入力する必要がありますが、室の形状が2組の平行線で構成された四角形で単純な片勾配天井の場合、属性パネルの機能で平均天井高さを自動的に算出する機能が利用できます。(c-1)天井勾配がある室(平均天井高さを計算した上で入力する場合)
天井高さに計算により求めた平均天井高さ3,200mm、最高天井高さに☑オンした上で3,400mmを入力します。
(c-2)天井勾配がある室(SEDの平均天井高さ自動算定機能を利用して入力する場合)
最高天井高さに☑オンした上で3,400mm、最低天井高さに☑オンした上で3,000mmを入力します。すると天井高さに平均天井高さの計算結果が自動的に入力されます。尚、この方法で平均天井高さを入力する場合、天井高さに任意の数値を入力することはできません。
この機能は、2組の平行線で構成された四角形でのみ利用できます。
(4)天井面積
告示では、蓄煙体積の算定を床面積×(平均天井高さ-Hlim(限界煙層高さ))で求めます。計算式では壁は垂直に設置され、床面積=天井面積であることが前提となっています。ところが、床面積=天井面積ではない計画建物も見られるので、任意な天井面積を設定できるようにしています。天井面積を入力した場合、蓄煙体積の算定は天井面積×(平均天井高さ-Hlim(限界煙層高さ))となります。
今回は、煙発生量、蓄煙体積、煙伝播の計算根拠となる室の床高さ、天井高さについて説明しました。それぞれの数値の意味をしっかり理解してSEDをご活用下さい。
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本コラムで用いたSED Ver3.1.19.1
本コラムで使用したSEDファイル
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